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第39話 愛され馬鹿はここに眠る2

Author: 月城葵
last update publish date: 2026-06-25 05:31:04

 虫だ。

 いや、虫の形をした何か。

 無数の脚が、肉の隙間を蠢いている。

「ああ、それも知ってる」

 吐き捨てる声は自然と低くなった。

 見慣れすぎて、嫌でも覚えてしまった光景だ。

 ……こいつらに慈悲は必要ねぇ。

「霧の魔女直伝だ……灰も残さねぇぞ」

 俺は短く息を吐いて、詠唱を紡ぐ。

 普段なら冗談混じりに茶化す俺だが、こればかりは遊びじゃ済まない。

 噛み間違えれば、俺ごと焼かれて終わりだ。

 古き言葉が紡がれるとき、火の王は門をそっと開く。

「掛けまくもかしこき、火の底に鎮まり給ふくらき王よ。今ここに、我が身我がこともて、門を開きたてまつらん。焔の御名みなとなへ、灰燼かいじんの冠を掲げ、すべての罪穢つみけがれを焼き尽くし給え。いざや、つちの奥よりでませ、死の業火よ」

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